『第七の封印』〜死神との生死を賭けたチェスバトル〜
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『第七の封印』
イングマール・ベルイマン監督、1957年・スウェーデン・96分
あらすじ
ペストが蔓延する中世ヨーロッパ。
至るところに死が溢れかえり、人々は世界の終わりに狂乱する。
そこへ、10年におよぶ十字軍の遠征から騎士アントニウスが帰還する。
後について来た「死神」が、彼を連れ去ろうとするが、アントニウスは、死神に条件つきのチェスを挑む。
「対局の間、死はお預けだ。俺が勝ったら解放しろ」
かくして、騎士と死神の生死を賭けたチェスバトルが幕を開ける。
第七の封印=世界の終わり
全編名シーンのような本作は、僕が同監督の中で最も好きな作品。(といっても、半分ちょっとしか観てませんが)
「第七の封印」とは、新約聖書の「ヨハネの黙示録」に出てくる挿話を指す。
子羊により解かれた封印。
その後、七人の使いが順番にラッパを吹いていくごとに、世界は崩壊していく。
つまり、タイトルは「世界の終わり」を意味する。
その中で、本作は、内なる信仰と外なる地獄を対比軸に置く。
戦争、貧困、疫病と外の世界は苦痛に満ち溢れている。
それが原因で、人々の内なる信仰心(神への信頼)が揺らいでいく。
本作の基本は、すべて内vs外だ。
騎士アントニウスは、無益に終わった十字軍遠征で、信仰心に疑問が湧く。
聖職者は、終わらぬ悲劇世界に絶望し、犯罪に手を染める。
民衆は、貧困、疫病に耐えられず、互いを鞭打ちながら、十字架を背負って練り歩く。
彼らは皆、神の存在を問い、神に救いを求めるが、皮肉なことに、神は祈る者の前には姿を見せない。
彼ら内なる信仰心は、こぞって外のなる地獄に押しつぶされていく。
結局、祈りも虚しく、人々は次々と死神に命を奪われる。その魔の手は、ついにアントニウスにもおよぶ。
ところが、ただひとつ、彼は旅芸人の若夫婦とその幼子を死神から逃すことに成功する。
彼らは、劇中でも唯一と言っていいほど、外界の地獄とは無関係で、純粋無垢を貫く。信仰や祈りにも関心がないようだ。
しかし、そんな彼らの前にこそ、神は現れる。
その証拠に、純心な夫ヨフだけが、聖母マリアとその幼子の姿を目にするのだ。
人は、恐れや不安の念から神さまに祈りを捧げます。
ある意味で、信仰心は、恐れが具現化したものと言えるでしょう。
すると無垢な人は、信仰という恐怖心を抱かないというまさにその一点で、死神から守られているのかもしれません。
グダグダ言いましたが、とにかく20世紀を代表する選りすぐりの傑作です。