人生はジグザグ道〜『そして人生はつづく』『オリーブの林をぬけて』〜
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『そして人生はつづく』『オリーブの林をぬけて』の2作品です。
『そして人生はつづく』
アッバス・キアロスタミ監督、1992年・イラン・91分
『オリーブの林をぬけて』
アッバス・キアロスタミ監督、1994年・イラン・103分
この2作品は、同監督の傑作『友だちのうちはどこ?(1987)』と合わせて、ジグザグ道三部作と呼ばれます。
『友だちのうちはどこ?』は、個人的にオールタイム・ベスト10に入るほど好きな作品ですが、この2作と合わさることで、愛すべき作品群となっています。
準ドキュメンタリーの最高峰『そして人生はつづく』
『友だちのうちはどこ?』から3年、1990年のイランで、死者3万人以上を出した巨大地震が起こりました。
この地震がなければ、『そして人生はつづく』も『オリーブの林をぬけて』も存在していません。
本作は、キアロスタミ監督が『友だちのうちはどこ?』の舞台となった村コケルにおもむき、主演したアハマドプール少年の安否を確認しに行くというものです。
それを半フィクション半ドキュメンタリーという形で見せています。
冒頭、コケルを目指して車を走らせる映画監督、渋滞、瓦礫の山、変わり果てた村々、山の斜面の巨大な地割れ、家族や住む家を失った人々…
映るものは、紛れもなく本物です。
コケルへの道中、前作にも登場した老人や少年に出くわします。
その瞬間の感動、「おぉ、生きてた!」「ちょっと大きくなってる」といった感動は、前作に思い入れがあるほど、強いものとなるでしょう。
しかし、肝心のアハマドプール少年は見つからず…そのまま迎えるラスト。
どうすれば、あれほど胸を打つ素晴らしいエンディングが思いつくのでしょうか。
悲劇が起きても、人間はたくましく生きることができる、そして人生はつづく…
傑作です!
純粋無垢なるラブストーリー『オリーブの林をぬけて』
ジグザグ道三部作のラストを飾る本作は、『そして人生はつづく』にちょこっと登場した若夫婦に焦点を当てたラブストーリーです。
大地震の翌日に式を挙げたという青年ホセインと妻タヘレ。
キアロスタミ監督は、「ホセインが一度タヘレにフラれたものの、それでも愛を貫いた」という話に霊感を得て、それをドラマに仕上げました。
実際に、本人たちが演じる結婚秘話は、不思議に新鮮で、いじらしく、心を打たれます。
本作もまたエンディングが最高に素晴らしく、口角がゆるみっぱなしでした。
広大な草原と青空を一望する俯瞰のカメラ。
無言を貫き、前をスタスタと歩くタヘレ。結婚を迫りながら、後を追うホセイン。
オリーブの林をぬけて、小さな点になるまで、カメラは2人を遠巻きに見つめる。急に立ち止まるタヘレ、おそらく嬉しい返事を受けてこちらに駆けてくるホセイン。
草原につんのめりながら、走る、走る…
ジグザグ道三部作は、エンディングがすべて素晴らしいですね。
それから前作で、アハマドプール少年と再会できず、どこか消化不良だった気持ちも、本作を見れば、すべてが完璧なまでにスッキリします。
人生はジグザグ道、心に残る三部作です。