イタリア名画『鉄道員』〜クリスマスの奇跡に涙する〜
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『鉄道員』
ピエトロ・ジェルミ監督・出演、1956年・イタリア・118分
あらすじ
戦後イタリア、鉄道員のアンドレア(監督本人)を家長に、妻サーラ、長男マルチェロ、長女ジュリア、そして末っ子のサンドロを中心に、家族の不和と崩壊、再生までを描く。
冬の寒さ忍び寄るこの時期、やっぱり観たいのは『鉄道員』のような心温まる作品です。
本作は、ある年のクリスマスで幕を開け、翌年のクリスマスで幕を閉じるれっきとしたクリスマス映画でもあります。
僕は、サンドロ少年見たさにちょこちょこ見返しています。子役史上でも3本の指に入るほど好きな少年です。
サンドロ少年、走る、走る!
本作では、家族それぞれの悲劇が同時並行して起こり、さらに絡まり合うことで不和が生じる。
父アンドレアは、投身自殺の若者を轢いてしまい、その後、動揺から赤信号を見落とし、事故寸前。別部署に左遷されて、低賃金、そして酒浸り。
長男マルチェロは、定職につかず、毎日昼近くまで家でふて寝。お金絡みの問題も。
長女ジュリアは、妊娠・流産・不倫の末、恋人と別居。家に帰っても父に張っ倒され、災難続き。
彼らの不幸は、サンドロ少年の純朴な目線を通して語られることで、悲惨きわまりない物語に堕することは避けられる。
むしろ、サンドロの純粋なモノローグが悲劇を中和してしまうのだ。
姉のジュリアが流産した際、「あ〜あ、叔父さんになれたのに。クラスには叔父さんになってる子はまだいない」などと心中独白が挟まれる。
サンドロは、家族の使いっ走りにされながら、バラバラの家族を再びつなぎ合わせるように、無心で駆け抜ける。
「鉄道の線路」と「道を駆け抜けるサンドロ」のカットが交錯するオープニングは、それを見事に表した名シーンだ。
まるで、サンドロが、絡み合い、解けていく家族の悲劇のど真ん中を突っ走っているかのよう。
一度崩壊した家族の絆は、クリスマスの夜に、以前より強度を増して再生する。
クリスマス・パーティーの後、夫アンドレアと妻サーラの居間を隔てた会話に涙した人は多いでしょう。
イタリアン・リアリズムの暖かい傑作、まさに名画と呼ぶにふさわしい作品です。