異種間恋愛のススメ。極私的ベスト30!
こんにちは、キーノです。
今回は、久しぶりのランキング『異種間恋愛映画ベスト30』!
僕自身、このジャンルがとても好きで、よく見てます。
「明らかに恋愛じゃない」「異種間か?」という作品も混じってるかもしれません。
その辺りはお許しください。
それでは、よろしくお願いします。
第30位『ニア・ダーク/月夜の出来事』
キャスリン・ビグロー監督、1987年・アメリカ・96分
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青年ケリブが、夜の酒場で出会った美しい少女メイは吸血鬼だった。
メイに噛まれたことで吸血鬼の仲間入りをするが、彼らの掟に従うことができず…
メイがとてもキュートだったので30位に。
第29位『ゆれる人魚』
アグニェシュカ・スモチンスカ監督、2015年・ポーランド・92分
人を食べて生きる美しい人魚の姉妹が上陸。
ナイトクラブのバンドの一員となるが、姉の方がバンドの青年と恋に落ちる。
怪談テイストで進行しつつ、そこにミュージカルの要素が入り込むという、あまり見たことないタイプの作品。
人魚として生き続けるか、人間となって死ぬか。なかなか良い異種間恋愛でした。
第28位『スプライス』
ヴィンチェンゾ・ナタリ監督、2009年・カナダ、フランス・107分
遺伝学者のクライブとエルサによって作り出された異形の生物・ドレン。
彼女は人間と動物のDNAを掛け合わせた存在だった。
急激なスピードで成長する彼女の生態には、驚くべき秘密が隠されていた。
恋愛にカウントするのは無理があるかもしれません。それでも、ドレンが成長していく中で異性に恋をする心理は人と同じでした。
そして、人と異形の生物が交わす衝撃のシーンも…
第27位『ラースと、その彼女』
クレイグ・ガレスピー監督、2007年・アメリカ・106分
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極度に内気な青年ラースは、女性とまともに会話もできない。
そんな弟を心配する兄のガスだったが、ついにラースに彼女ができたとの噂が。
しかし、紹介されたのは等身大のラブドール・ビアンカだった。
ビアンカとの会話は、ラース自身との対話でもあります。胃に優しく温かい話でした。
第26位『キャット・ピープル(1982)』
ポール・シュレイダー監督、1982年・アメリカ・118分
黒豹と人間との間に生まれたキャット・ピープル。
その血を引く娘アイリーナは、人と愛し合うと黒豹に変化する宿命にあった。
本作はオリジナル版もありますが、やはり美神ナスターシャ・キンスキーが主人公なので、この82年版が好きです。
第25位『ジョー・ブラックをよろしく』
マーティン・ブレスト監督、1988年・アメリカ・181分
事故死した青年ビルの体を借りた死神は、死期の近い男ウィリアムのもとへ。そこで彼の愛娘スーザンと出会い…
期待通りに、思い通りに大団円を迎えてくれる作品。
1934年の『明日なき抱擁』がオリジナルとのことですが、観たことないので要チェックですね。
第24位『アンドリューNDR114』
クリス・コロンバス監督、1999年・アメリカ・132分
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人型家事ロボットとして造られた「NDR114」。
「アンドリュー」と名付けられたロボットは、やがて人の心を育んでいき、ボディも人間へとアップグレードさせていくのだが…
人の心を持つロボットが、やがて身体もすべて人と同じになったとき、果たして彼はロボットか人間か。
なかなか哲学チックな話でした。
第23位『ゴースト/ニューヨークの幻』
ジェリー・ザッカー監督、1990年・アメリカ・129分
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人と幽霊とのロマンスものでは、あまりに有名な一作。
ラブストーリー、コメディ、ファンタジー、ホラー、サスペンスとあらゆるエッセンスが入り乱れつつ、絶妙なバランスで成立しているスゴイ作品だと思ってます。
第22位『her/世界でひとつの彼女』
スパイク・ジョーンズ監督、2013年・アメリカ・126分
ロサンゼルスで代筆ライターをする中年男性セオドアは、人工知能型OS「サマンサ」を入手。
声だけの存在であるサマンサと会話する内、次第に彼女に心惹かれていく。
スマホ(サマンサ)片手にデートをするセオドア。
可能性としては、このタイプの恋愛が、この先一番増えそう。
第21位『ティム・バートンのコープスブライド』
ティム・バートン&マイク・ジョンソン監督、2005年・アメリカ、イギリス・76分
19世紀のヨーロッパ、気弱な青年ヴィクターは、結婚式のリハーサルで失敗を繰り返す。
夜の森で一人、誓いの言葉を練習し、細枝を指に見立てて指輪をはめる。
しかし、枝だと思っていたのは、花嫁姿をした死者の指だった。
ストップ・モーションで描かれるティム・バートンの世界。
終わり方、素晴らしかったな〜。思わず泣きそうに。
第20位『キングコング(1933)』
メリアン・クーパー&アーネスト・シェードザック監督、1933年・アメリカ・100分
地図に載っていない孤島「髑髏島」に向かう映画撮影の一行。
そこで、「生贄の儀式」を執り行う現地住民を発見する。
やがてあらわれた巨大なキングコングに、主演女優のアンがさらわれて…
ストップ・モーション映画の先駆的な作品の一つ。
警官が発した最後のセリフ、「Beauty killed the Beast」がやけに印象に残っています。
第19位『リトル・マーメイド』
ロン・クレメンツ&ジョン・マスカー監督、1989年・アメリカ・85分
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海底の王国アトランティカに住む人魚姫アリエルは、地上の世界に憧れていた。
ある日、海上を航海する船に乗った人間の王子エリックに恋をする。
アリエルが地上に恋い焦がれて歌う『Part of your world』、カニのセバスチャンが海の素晴らしさを歌う『Under the sea』。
本作は歌が本当に素晴らしいですね。
第18位『ベルリン・天使の詩』
ヴィム・ヴェンダース監督、1987年・フランス、西ドイツ・130分
守護天使ダミエルは、サーカス団の舞い姫マリオンに恋をする。
遠くから見守ることに我慢できなくなったダミエルは、永遠の生命を犠牲に人間になるのだが…
モノクロな天使の世界とカラフルな人間の世界。
永遠に生きる天使と有限な存在の人間。
この対比がとても美しい映画です。
第17位『シザーハンズ』
ティム・バートン監督、1990年・アメリカ・105分
老発明家によって造られた人造人間エドワード。
人間の手をもらう前に造り主が亡くなったため、手は仮初めのハサミのまま。
心優しい彼は、町の娘キムに恋をする。
中学生くらいに初めて観ましたが、まだその時に感じた切なさが忘れられません。
第16位『パーティーで女の子に話しかけるには』
ジョン・キャメロン・ミッチェル監督、2017年・イギリス、アメリカ・102分
パンクロック大好きな高校生エンは、ある夜、聞こえてきた音楽に吸い寄せられるように怪しげな館へと入る。
中には奇妙な衣服に身を包み、奇怪な歌や踊りをする人々がいた。
エンは、ある一室で、仲間に反抗する少女に出会う。
これも初めて観たときはビックリしました。
カルト化して裏人気の高まりそうな一作です。
第15位『天使とデート』
トム・マクローリン監督、1987年・アメリカ・101分
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主人公の青年ジムは、ある夜、庭先のプールで大きな衝撃音を耳にする。
なんと空から天使が落ちてきたのだ。
婚約者がいる身だが、美しく純粋な天使に惚れられてしまったジムは…
天使役のエマニュエル・べアールが反則級の美しさですね。
フライドポテトを気に入って、爆食いするシーンがキュートです。
第14位『スプラッシュ』
ロン・ハワード監督、1984年・アメリカ・111分
カナヅチの青年アランは、海で溺れていたところを人魚に助けられる。
お礼をいう間もなく、彼女は海に帰っていったが、アランが海中に落としていった身分証を拾って、人魚はニューヨークへと向かう。
一時期、「トム・ハンクスにハズレなし」と思って、彼の出ている作品ばかり観ていたときに出会いました。
やっぱり、ハズレじゃなかった!
第13位『ビデオ・ドローム』
デヴィッド・クローネンバーグ監督、1985年・カナダ・89分
テレビ局の社長マックスは、日々、過激な映像を探し回っていた。
ある日、殺人や拷問シーンが延々繰り返されるだけの「ビデオ・ドローム」を入手する。
それ以来、頭からビデオの存在が離れなくなる。
これを異種間恋愛に入れるのはおかしいかもしれません。
しかし、ビデオに魅せられるマックスは、狂気に満ちた恋愛に昂じているようでした。
人間とビデオの交配というショッキングなシーンも必見。
第12位『キャンディマン』
バーナード・ローズ監督、1992年・アメリカ・101分
鏡の前でその名を5回唱えると現れ、かぎ爪で名を呼ぶ者を殺害するという伝説上の殺人鬼「キャンディマン」。
その都市伝説を調査するヘレンは、奇怪な事件に巻き込まれることに。
これは文句なしに素晴らしかったです。
まさかの展開と最高のクライマックスを魅せていただきました。
都市伝説の好きな方はぜひ。
第11位『奥様は魔女(1942)』
ルネ・クレール監督、1942年・アメリカ・77分
17世紀末、火あぶりにされた魔女ジェニファーは、告発したウーリー家に、代々伝わるような呪いをかける。
時は経ち1942年、 ウーリー家の当主ウォレスを貶めようと、自由の身になったジェニファーが近付くが、とあるミスから彼に恋心を抱くことに。
ドラマや映画のリメイクもある本作ですが、やはり巨匠ルネ・クレール監督の本作が良いですね。
第10位『スーパーマン(1978)』
リチャード・ドナー監督、1978年・アメリカ・152分
惑星クリプトンで生まれた少年カル=エルは、母星の壊滅に伴い、地球に送られる。
クラーク・ケントとして老夫婦に育てられた少年は、やがて自分の正体を知ることに。
パッと思いつかなかったものの、よく考えるとスーパーマンも異種間恋愛ですよね。
スーパーマンが記者の女性ロイス・レーンを連れて、空を舞うシーンは歴史的名場面。
第9位『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』
ヴィム・ヴェンダース監督、1993年・ドイツ・165分
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本作は第18位に上げた『ベルリン・天使の詩』の続編です。
守護天使ダミエルが人間界に降りたことで仲間を失った天使カシエル。今度は自分も人間になりたいと願うようになり…
恋愛要素はないに等しいですが、今度は人間愛を見せました。
悪徳に満ちた人間界で、いかに善良であるか。
あと天使役のナスターシャ・キンスキーが良かったですね。
第8位『ザ・フライ』
デヴィッド・クローネンバーグ監督、1986年・アメリカ・96分
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天才科学者セスは、物質を瞬間移動させる転送装置「テレポッド」を開発する。
隣り合うポッドの片方に入れた物質が、細胞レベルで分解し、転移先のポッドで再びくっつくというもの。
セスは自分を実験台にするが、そのとき1匹のハエが一緒に入り込んでいて…
恋人がハエになっても愛せるという人はどのくらいいるでしょう。
ある意味、これは究極の愛のカタチです。
続編の『ザ・フライ2』も面白いですが、もはやハエではなくトカゲのオバケでした。
第7位『エレクトリック・ドリーム』
スティーヴ・バロン監督、1984年・イギリス・96分
建築家のマイルズは、購入したデスクトップ型PCにシャンパンをこぼしてしまう。
それ以来、人格を持ってしまったPCは、マイルズの意中の女性に恋をするようになり。
1組の男女とパソコンの奇妙な三角関係を描いた異種間恋愛。
パソコンがマイルズの私生活を乗っ取っていく様は怖いですが、最後は思わずホロリときます。
劇中の電子ミュージックも素晴らしい。
第6位『雨月物語』
溝口健二監督、1953年・日本・96分
貧農の源十郎は、 町で焼き物を売っているとき、「若狭」という美しくも妖しげな女性に出会う。
彼女の屋敷に招かれた源十郎は、豪奢なもてなしを受けるが…
日本が誇る名作映画の一つ。
恋愛がメインというわけではありませんが、幽霊モノとしてはやはりピカイチかと。
第5位『シェイプ・オブ・ウォーター』
ギレルモ・デル・トロ監督、2017年・アメリカ・123分
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1962年の冷戦下、アメリカの機密機関で清掃員をするイライザは、発話障害を抱えていた。
ある日、彼女は、タンクの中に囚われの身として運び込まれた「魚人」に出会う。
「外見でなく内面を見よ」というメッセージは異種間恋愛モノによくあること。
ところが、本作はまったく違います。
イライザは、魚人を心底男前だと思って接するのです。
さすが、モンスター好きのデルトロ監督ですね。
第4位『美女と野獣(1946)』
ジャン・コクトー監督、1946年・フランス・95分
本作もオリジナルを含め、5つほど同名映画があります。
個人的には1991年のディズニー・アニメ版も大好きですが、ジャン・コクトー版の芸術表現は凄まじいばかり。
屋敷内の銅像を生身の人が演じていて、ロウソク立や壁の顔が、ベルの背後で動いたりします。
美女と野獣が天空を舞うシーンは、芸術による昇天の極み。
第3位『カイロの紫のバラ』
ウディ・アレン監督、1985年・アメリカ・88分
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薄幸の女性セシリアの唯一の楽しみは映画を観ること。
上映中の『カイロの紫のバラ』に夢中になった彼女は、何度も通い詰める。
ある日、上映中のスクリーンからハンサムな冒険家トム・バクスターが飛び出て、セシリアを外に連れ出してしまう。
異種間かどうかは分かりませんが、相手が一応「映画の人物」なのでランクイン。
映画好きな人にとっては夢のような話ですね。
第2位『マネキン』
マイケル・ゴットリーブ監督、1987年・アメリカ・90分
芸術家を目指す青年ジョナサンは、仕事で失敗を繰り返し、職を転々とする生活を送っていた。
ある夜、新しい職場のデパートで仕事していると、突然、美しいマネキンが話しかけてくる。
僕の大好きな「80年代青春映画」と「異種間恋愛」が合体すれば、もう好きにならずにはいられません。
スターシップが歌う主題歌「愛はとまらない」も相まって、完璧でした。
第1位『ぼくのエリ/200歳の少女』
トーマス・アルフレッドソン監督、2008年・スウェーデン・115分
母子家庭でいじめられっ子の少年オスカーは、居場所がなく孤独な生活を送っていた。
ある日、アパートの隣室に奇妙な少女エリが引っ越してくる。
真冬にも関わらず薄着で夜の闇を彷徨う彼女にはある秘密があった。
異種間恋愛ランキング、僕の中では断トツの1位です。
居場所のない者同士が惹かれ合う小さな恋。
愛する人が孤独な人の居場所になる、素晴らしい映画でした。
毎年、冬になると欠かさず観てます。
以上、
人魚・魚人×4
AI・ロボット×4
幽霊・亡者×4
天使・死神×4
異星人・エイリアン×3
動物・獣×3
吸血鬼×2
人形×2
魔女×1、映画×1、ハエ×1、ビデオ×1
の計30本になりました。
泣く泣くカットした作品も多々ありますが(スピルバーグ監督の『オールウェイズ』とか)、今のところ、これが極私的なベスト30になります。
「異種間恋愛モノ」は本当に好きなシャンルなので、オススメの作品があればぜひ教えていただきたいです。
それでは、長々と失礼しました。
自然の側に居合わせる歓び『青いパパイヤの香り』
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『青いパパイヤの香り』
トラン・アン・ユン監督、1993年・ベトナム、フランス・104分
カンヌ国際映画祭 カメラドール新人監督賞 受賞
自然の懐を垣間見る歓び、自然の隣に居合わせる幸せ、蒸し暑さの中に感じる涼しさ。
叙情味溢れる作品で、これまた大好きな一本です。
あらすじ
1951年のサイゴン。
10歳の少女ムイは、田舎から使用人として奉公にやってくる。
ムイは、奉公先の長男の親友クェンに仄かな恋心を抱く。
10年後、ムイは作曲家となったクェンの家で働くことになるが...
自然の側に居合わせる歓び
「物静か・賢い・薄幸感」と、これまた僕の好きな三拍子を兼ね備えた主人公のムイ。
この時点で、本作はほぼお気に入り確定なのですが、それ以上に自然を見つめるムイのまなざしに心打たれました。
彼女は言葉をあまり口にしませんが、言葉では足りないほど、好奇心に満ちた目で自然を、そして生き物を愛でます。
草の上に佇むカエル、地面を忙しなく右往左往するアリ、パパイヤの中にぎっしり詰まった真珠のようなタネ...
特に、捕まえることも言葉をかけることもなく、ただ嬉しそうに眺め続けます。
それは恋心を抱くクェンに対しても同じ。
声をかけることもアプローチをすることもなく、まるで同じ空間に居ることが嬉しいというように。
自然の側に居合わせることの歓びを、ムイは全身で噛みしめているように感じます。
自然と隣り合わせの生活感も素晴らしい。
洗濯板で洗った手干しの衣服、バケツに水を汲んでの雑巾かけ、庭先で調理される香ばしい音、大きな壺に流れ落ちるお米のサァーという音…
この手作業のなんとも美しいこと。
世の中には、ボタンひとつで面倒なプロセスをカットできる便利な物が増えてきましたが、やはり手作業の儀式めいたひと手間に人類の生を感じます。
静かな名作です。
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生きる、ただそれだけが願い『酔っぱらった馬の時間』
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『酔っぱらった馬の時間』
バフマン・ゴバディ監督・脚本・製作、2000年・イラン・80分
カンヌ国際映画祭 カメラドール新人監督賞 受賞
本作はフィクションであり、同時にドキュメンタリーでもあります。
自身もクルド人であるゴバディ監督は、巨匠キアロスタミのもとで助監督を勤めた人物。
満を持して臨んだ初の長編作品には、30年以上を過ごした故郷の現実を題材に選び、本作へと成就しました。
ただひたすら「生きたい」と願う子供たちの魂の叫びで本作は満たされています。
あらすじ
イラク国境にほど近いイラン領クルディスタン。
母を難産で、父を地雷で亡くした幼い5人兄妹は、自分たちだけで生きていかなければならない。
幼くして家長となった次男のアヨブは、学校に行くことも許されず、身を粉にして働き続ける。
そしてアヨブは、兄妹を養うため、不治の病を抱える小さな兄マディを救うため、命の危険を伴う密輸キャラバンに挑む。
「生まれてきた以上は生きねばならぬ」
「人生は苦しいもの〜、子供たちも老いていく〜」
仕事を終えた子供たちが、トラックの荷台にひしめき合って、こんな歌を口ずさむ。
検問所の国境警備隊に引きずり降ろされ、お腹に隠し込んだノートを没収される。学校で使う大事なノートだ。
ノート一冊も満足に手に入らない世界の中で、子供たちは生きている。
追い払われた子供たちは、膝から下が埋まる雪山の中を隊をなして帰っていく。
その中に、5人兄妹の次男アヨブ、次女アーマネ、長男マディがいた。
アヨブの背に身を寄せるマディは、15歳にもなるのに赤ん坊のように小さい。彼は不治の病を患い、日々、身体は衰弱していた。
道中、マディに薬を飲ませるが、水がないので雪を口に含ませる。
長女のロジーネは、まだ幼い末妹の世話で家にいる。
苦痛しかない世界の中、5人が望むのはただ生きること。
アヨブはその小さな手で4人の家族を食べさせなければならない。大人は助けてくれない。
大人たちに混じり、命を落とすかもしれない密輸キャラバンに参加する。
背にマディを背負い、後ろ手でラバを引いて、大雪の中をひたすら歩き続ける。
「生まれてきた以上は生きねばならぬ」
映画の終わりに、脳裏を過ぎる漱石の言葉。映画で世界の現実を目の当たりにする。
気軽に「傑作」と呼んでいいものか、とにかく生きている内に観ておきたい作品です。
ギリシア・ロードムービーの名作『霧の中の風景』
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『霧の中の風景』
テオ・アンゲロプロス監督、1988年・ギリシア、仏、伊・127分
第45回 ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞
もうこれはオールタイムベスト級に大好きな作品。同監督の中でも、個人的には一番です。
明確な目的地も見えない中、ただ前に進み続けるしかない姉弟を寓話的に描き出したロードムービーの傑作だと思います。
あらすじ
ギリシアのアテネ。
12歳の姉ヴーラと5歳の弟アレクサンドロスは、母子家庭のもとに暮らしている。
ある日、父親が隣国のドイツにいることを聞いた姉弟は、国際列車に飛び乗って父を探す旅に出る。
霧の中に「奇跡」を探す旅
幼気な弟アレクサンドロスも素敵だが、姉のヴーラがとにかく素晴らしい。
僕は映画の中に出てくる、物静かで聡い少女にめっぽう弱いのです。
孤独で薄幸感をまとっている姿にとても惹かれます。
『ぼくのエリ』や『パンズ・ラビリンス』、『クジラ島の少女』など、このタイプの少女が出ている映画に好きなものが多いです。
見た目もみんなどことなく似ているんですよね。
そんなヴーラが列車の中で、見知らぬ父に送る手紙のモノローグに、そこはかとない美しさを感じます。
ご迷惑にならないよう、お顔を見たらすぐに帰ります。
とても会いたいです。
答えてくださるなら、列車の音に託してください。
タタン...タタン...タタン...
ところが姉弟の思いとは裏腹に旅は彼らを冷たくあしらいます。
実は目的とする父の居どころも、生きているのかも、そもそもドイツにいるのかも分かっていないのです。
それでも2人は暗闇の中を手探りするようにドイツを目指します。
まさに霧のただ中を進んで行くしかないのです。
2人の旅路はさまざまな寓話的風景に彩られます。
降る雪に時が止まった町の中を、2人だけが手を取り合って駆け抜ける風景...
雪に覆われた夜の路上、涙に暮れる花嫁と息も絶え絶えの白馬が横たわる風景...
風吹きすさぶ早朝、海の波間から突如現れる右手の巨像の風景...
長い長い旅は、2人の姉弟を時に残酷にもてあそんでしまいます。
それは幼い2人には辛すぎるものでもあります。
しかし、どんな悲劇の中にあっても健気にひた走ることをやめない2人の姿を見ては、こちらが目を背けることは決して出来ないのです。
交差する名画たち『フランケンシュタイン』×『ミツバチのささやき』
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『フランケンシュタイン(1931)』、そして『ミツバチのささやき』の二作品。
『フランケンシュタイン』
ジェイムズ・ホエール監督、1931年・アメリカ・71分
メアリー・シェリー原作 同名小説 『フランケンシュタイン』
『ミツバチのささやき』
ビクトル・エリセ監督、1973年・スペイン・99分
サン・セバスチャン国際映画祭 グランプリ
ともに映画史の名作として記憶されているのはもちろん、前者をベースにして後者が誕生したのも知られているところ。
この二作品は、幼年期に見えていた世界を思い出させてくれるものとして、とてもお気に入りの名画たちです。
※以下、内容に大きく触れています。
少女だけに見えた怪物の中の「精霊」
「この物語は、人類創造が神の手によって為されたことを忘れた人々のお話です」
と、このような前口上で『フランケンシュタイン』は幕を開けます。
かの有名なモンスターは、若きフランケンシュタインという科学者によって、遺体に生命を吹き込まれ、誕生しました。
(なので、モンスターが「フランケンシュタイン」という名前ではないんですよね)
異形のモンスターは、創造主の館を抜け出し、湖のほとりで一人の少女に出会います。
ここが『ミツバチ〜』でも登場した有名なシーン。
少女は、血眼でモンスターを探す大人たちとは違い、彼に対して恐怖感を抱くことはありませんでした。
怪物の手を取り、湖の側まで連れていき、花を水面に浮かべる遊びを教えます。
舟のように浮かぶ花びらに喜んだ怪物は、突然、少女を抱え上げ湖に放り込みました。
おそらく、少女も花のように浮かぶと思ったのでしょう。
しかし、彼女が水面に姿をあらわすことはありませんでした。
その後、怪物は、激昂した村人たちに追い詰められ、あの最後を迎えます。
人の手により生み出された怪物は、大人たちに悪しき者と断定され、排除の対象となる哀しき宿命を背負っていました。
しかし、湖の少女には、怪物の中の精霊の姿が見えていたのでしょう。
幼年期に見えていた世界
...という話の『フランケンシュタイン』が、今度は『ミツバチ〜』の中で、主人公の少女アナが住む村に、巡回映画としてやってきます。
まだ6歳のアナは、映画の中の怪物を本物の存在、精霊だと思い込むのです。
アナの目も、あの湖の少女のように、精霊の姿を見つめる力を持っていました。
父に連れられて行ったキノコ狩りで、アナは、毒キノコを「悪しき者だ」と踏み潰す父親の足元を、憂いのこもったまなざしで見つめます。
不当に排除される毒キノコが、大人たちに追いやられるフランケンシュタインの姿と重なったのかもしれません。
その後、アナは精霊を追い求め、夜の森をさまよい、辿り着いた湖のほとりでついに怪物と出逢います。
この時、異形の怪物への恐怖感はアナの中には無かったでしょう。
その直前に、偶然見つけた毒キノコに触れるアナがその心境を物語っています。
アナのように、現実と虚構の境界線が今よりずっと曖昧だった時期は誰にでもあったはずです。
巨木の木目が人の顔に見えたり、動物や虫の姿を空の雲に探したり、今では何ともないベランダや納戸がやけに怖かったり...
ところが、知らぬ間に出来ていた現実と虚構の間の大きな壁のせいで、あの頃見えていたものは確実に見えなくなっています。
そんな時、この二作品を観ることで、幼年期に見ていた風景の記憶が、少しばかり蘇ってくるのです。
ビクトル・エリセ監督の傑作『ライフライン』はこちら。
ビクトル・エリセ監督『ミツバチのささやき』『エル・スール』Blu-ray ツインパック(初回限定)
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天才・メビウスのヴィジュアル革命『アルザック・ラプソディ』
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『アルザック・ラプソディ』
メビウス監督・脚本・デザイン、2002年・フランス・全50分(14エピソード収録)
バンド・デシネ(フレンチコミック)の『アルザック』を、原作者メビウス自ら監修して、アニメ化された本作。
宮崎駿監督にも多大な影響を与えており、本作が『風の谷のナウシカ』の元ネタになったという話も。
異空間を旅する主人公の短話が羅列される作りには、どこか筒井康隆原作の『旅のラゴス』っぽさもあります。
天才・メビウスのヴィジュアル革命!
圧倒的に目を惹くのは、話の面白さよりもヴィジュアルの革新さです。
主人公は、反重力翼竜の背に乗って、多元世界"B砂漠"をさすらう孤高の戦士アルザック。
大気の流れにまかせて空を舞うその姿は、なるほどナウシカを思い起こします。
B砂漠は、隅から隅まで謎めいた場所。
アルザック曰く、B砂漠は「世界であり、システムであり、時間の連続体」らしい。
B砂漠を舞台にした短いエピソードが、独立して並べられますが、相互に話の繋がりはありません。
しかし、そのどれもが奇怪なイマジネーションと強烈なヴィジュアルを持って、迫ってきます。
一面の大地に群がり生える肉食植物、一度捕まれば巨人ですら離さない。
密生する植物の海にポツンと浮かぶ橋、その上で禅を組み笛を奏でるアルザック。
その光景は、地獄世界の中で唯一残された安寧の地のようにも見えます。
人工サソリ、バッタ爆弾、ガラス筒に閉じ込められた少女…SFとファンタジーが融合した強烈なイマージュのオンパレード。
エピソードの終わりには、もう少しメビウスの頭の中をのぞいていたい、とそんな想いに駆られます。
ジャッキー映画に継承された傑作喜劇6選
こんにちは、キーノです。
今回はジャッキー・チェン映画に継承された傑作喜劇6選!
ジャッキーは小さな頃から大好きで、人生で初めて憧れた映画人でもあります。
その後、映画を少し観るようになってから、ジャッキーが偉大なコメディアン3人の魂を受け継ぐ者であることを聞き知りました。
三大喜劇人、ズバリ
チャールズ・チャップリン(1889-1997)
バスター・キートン(1895-1966)
ハロルド・ロイド(1893-1971)
です。
今回は、ジャッキーが自作の中で、彼らにオマージュを捧げた喜劇映画を選びました。
(有名なものもありますし、僕の独断と偏見も入っています)
それでは、よろしくお願いします!
まずは『プロジェクトA』にて、オマージュされた3作品から。
1.『モダン・タイムス』
チャールズ・チャップリン監督・主演、1936年・アメリカ・87分
映画史上、屈指の存在であるチャップリンの名作です。
上は、工場で働くチャップリンが、ベルトコンベアに吸い込まれて、ネジのくねくね道を流れていくところ。
これは、時計台の屋根裏でのバトルシーンに受け継がれています。
時計のゼンマイに手錠が絡まったジャッキー、カッコ面白かったですね〜
2.『ロイドの要人無用』
サム・テイラー監督、ハロルド・ロイド主演、1923年・アメリカ・66分
『プロジェクトA』のオマージュと言えば、本作が最も有名です。
上は、ロイド演じる青年が、勤め先の特別キャンペーンにて、壁登りをするシーンになります。
ロイドは、この3年前に撮影中の爆発事故で、右手の親指と人差し指を失いました。
この壁登りも、義指を装着して臨んでいるそうです。
とんでもないプロ根性と身体能力の持ち主だ...
3.『キートンの恋愛三代記』
バスター・キートン監督・主演、1923年・アメリカ・63分
僕が最も愛してやまない喜劇人キートン。
本作のスタントは、控え目に言って、無茶苦茶です。
上は、警官からビルの屋上に逃げたキートンが、向かいのビルにダイブして届かず、真っ逆さまに落ちていくという驚愕のシーン。
ジャッキーが時計台から落ちて、布を突き破って落下するシーンは、本作とほぼ一致。
ただキートンの方が、確実に死に近い落ち方です。
それをストーンフェイスで平然とこなすから、さらに怖い。
以上が、『プロジェクトA』の時計台が捧げたオマージュ三作になります。
ここからは、明確にどの作品のどのシーンというわけではありませんが、ジャッキー映画でよく見かけるスタント三作です。
4.『猛進ロイド』
ハロルド・ロイド主演、1924年・アメリカ・80分
本作は、元祖ラブコメ・アクション映画と呼ばれるほどの傑作。
女性恐怖症の青年が、一目惚れした女性の結婚を阻止するため、あらゆる移動手段を駆使して、式場まで猛進するお話です。
画像は、アクセル全開の電車の上に乗ったロイドが、棒状のパンタグラフに捕まっているシーン。
ジャッキーもよく、バスに傘で捕まったり、道路看板にぶら下がったりしますよね。
5.『キートンの蒸気船』
バスター・キートン主演、1928年・アメリカ・69分
本作もキートンの傑作コメディの一つ。
上は、猛烈な嵐の中を逃げるキートンの頭上から、家の側壁が倒れてくるというシーンです。
ちょうど窓枠の部分が身体を抜いて、無傷で助かるというギャグですが、数センチずれていたら死んでます。
こちらは明確に作品が分かっていて、『プロジェクトA2』に同じようなシーンが登場します。
6.『キートンの探偵学入門』
バスター・キートン主演、1924年・アメリカ・44分
またまたキートンです。
上は、追っ手から逃げるキートンと恋人が、急ブレーキにより河にすっ飛んで、そのまま車がボート代わりになるというシーン。
これを見ると『プロジェクト・イーグル』で、ジャッキーが車をボートにして釣りをするシーンが思い出されます。
おそらくオマージュだと思うのですが、勘違いかもしれません。
というより、ジャッキー映画と三大喜劇人の映画には、似ているシーンが多くて、どれもオマージュに見えてきます。
ジャッキーは、三代喜劇人の笑いやスタントを完璧に咀嚼して、自作の血肉としているのでしょうね。
これからも頑張れ、ジャッキー!
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