キネマ・ジャングル

国・年代・ジャンルを問わず、心に響いた作品について呟いてみる映画ブログです。

交差する名画たち『フランケンシュタイン』×『ミツバチのささやき』

こんにちは、キーノです。

 

今回の作品は『フランケンシュタイン(1931)』、そして『ミツバチのささやき』の二作品。

 

『フランケンシュタイン』

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Credit:Amazon.co.jp

ジェイムズ・ホエール監督、1931年・アメリカ・71分

メアリー・シェリー原作 同名小説 『フランケンシュタイン』

 

『ミツバチのささやき』

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Credit:Amazon.co.jp

ビクトル・エリセ監督、1973年・スペイン・99分

サン・セバスチャン国際映画祭 グランプリ

 

ともに映画史の名作として記憶されているのはもちろん、前者をベースにして後者が誕生したのも知られているところ。

 

この二作品は、幼年期に見えていた世界を思い出させてくれるものとして、とてもお気に入りの名画たちです。

 

※以下、内容に大きく触れています。

 

少女だけに見えた怪物の中の「精霊」

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Credit:youtube

「この物語は、人類創造が神の手によって為されたことを忘れた人々のお話です」

 

と、このような前口上で『フランケンシュタイン』は幕を開けます。

 

かの有名なモンスターは、若きフランケンシュタインという科学者によって、遺体に生命を吹き込まれ、誕生しました。

 

(なので、モンスターが「フランケンシュタイン」という名前ではないんですよね)

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Credit:youtube

異形のモンスターは、創造主の館を抜け出し、湖のほとりで一人の少女に出会います。

 

ここが『ミツバチ〜』でも登場した有名なシーン。

 

少女は、血眼でモンスターを探す大人たちとは違い、彼に対して恐怖感を抱くことはありませんでした。

 

怪物の手を取り、湖の側まで連れていき、花を水面に浮かべる遊びを教えます。

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Credit:youtube

舟のように浮かぶ花びらに喜んだ怪物は、突然、少女を抱え上げ湖に放り込みました。

 

おそらく、少女も花のように浮かぶと思ったのでしょう。

 

しかし、彼女が水面に姿をあらわすことはありませんでした。

 

その後、怪物は、激昂した村人たちに追い詰められ、あの最後を迎えます。

 

 

人の手により生み出された怪物は、大人たちに悪しき者と断定され、排除の対象となる哀しき宿命を背負っていました。

 

しかし、湖の少女には、怪物の中の精霊の姿が見えていたのでしょう。

 

幼年期に見えていた世界

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Credit:youtube

...という話の『フランケンシュタイン』が、今度は『ミツバチ〜』の中で、主人公の少女アナが住む村に、巡回映画としてやってきます。

 

まだ6歳のアナは、映画の中の怪物を本物の存在、精霊だと思い込むのです。

 

アナの目も、あの湖の少女のように、精霊の姿を見つめる力を持っていました。

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Credit:youtube

 父に連れられて行ったキノコ狩りで、アナは、毒キノコを「悪しき者だ」と踏み潰す父親の足元を、憂いのこもったまなざしで見つめます。

 

不当に排除される毒キノコが、大人たちに追いやられるフランケンシュタインの姿と重なったのかもしれません。

 

 

その後、アナは精霊を追い求め、夜の森をさまよい、辿り着いた湖のほとりでついに怪物と出逢います。

 

この時、異形の怪物への恐怖感はアナの中には無かったでしょう。

 

その直前に、偶然見つけた毒キノコに触れるアナがその心境を物語っています。

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Credit:Amazon.co.jp

アナのように、現実と虚構の境界線が今よりずっと曖昧だった時期は誰にでもあったはずです。

 

巨木の木目が人の顔に見えたり、動物や虫の姿を空の雲に探したり、今では何ともないベランダや納戸がやけに怖かったり...

 

ところが、知らぬ間に出来ていた現実と虚構の間の大きな壁のせいで、あの頃見えていたものは確実に見えなくなっています。

 

そんな時、この二作品を観ることで、幼年期に見ていた風景の記憶が、少しばかり蘇ってくるのです。

 

 

 

ビクトル・エリセ監督の傑作『ライフライン』はこちら。

www.kinemajungle.work

 

 

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