キネマ・ジャングル

国・年代・ジャンルを問わず、心に響いた作品について呟いてみる映画ブログです。

ギリシア・ロードムービーの名作『霧の中の風景』

こんにちは、キーノです。

 

今回の作品は『霧の中の風景』

テオ・アンゲロプロス監督、1988年・ギリシア、仏、伊・127分

第45回 ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞

f:id:kinemajungle:20191008120127j:plain

Credit:Amazon.co.jp

もうこれはオールタイムベスト級に大好きな作品。同監督の中でも、個人的には一番です。

 

明確な目的地も見えない中、ただ前に進み続けるしかない姉弟を寓話的に描き出したロードムービーの傑作だと思います。

 

あらすじ

ギリシアのアテネ。

12歳の姉ヴーラと5歳の弟アレクサンドロスは、母子家庭のもとに暮らしている。

ある日、父親が隣国のドイツにいることを聞いた姉弟は、国際列車に飛び乗って父を探す旅に出る。

 

霧の中に「奇跡」を探す旅

f:id:kinemajungle:20191008124259p:plain

Credit:youtube

幼気な弟アレクサンドロスも素敵だが、姉のヴーラがとにかく素晴らしい。

 

僕は映画の中に出てくる、物静かで聡い少女にめっぽう弱いのです。

孤独で薄幸感をまとっている姿にとても惹かれます。

 

『ぼくのエリ』『パンズ・ラビリンス』『クジラ島の少女』など、このタイプの少女が出ている映画に好きなものが多いです。

 

見た目もみんなどことなく似ているんですよね。

f:id:kinemajungle:20191008124331p:plain

Credit:youtube

そんなヴーラが列車の中で、見知らぬ父に送る手紙のモノローグに、そこはかとない美しさを感じます。

 

ご迷惑にならないよう、お顔を見たらすぐに帰ります。

とても会いたいです。

答えてくださるなら、列車の音に託してください。

タタン...タタン...タタン...

 

 

ところが姉弟の思いとは裏腹に旅は彼らを冷たくあしらいます。

 

実は目的とする父の居どころも、生きているのかも、そもそもドイツにいるのかも分かっていないのです。

 

それでも2人は暗闇の中を手探りするようにドイツを目指します。

まさに霧のただ中を進んで行くしかないのです。

f:id:kinemajungle:20191008124401p:plain

Credit:youtube


2人の旅路はさまざまな寓話的風景に彩られます。

 

降る雪に時が止まった町の中を、2人だけが手を取り合って駆け抜ける風景...

 

雪に覆われた夜の路上、涙に暮れる花嫁と息も絶え絶えの白馬が横たわる風景...

 

風吹きすさぶ早朝、海の波間から突如現れる右手の巨像の風景...

f:id:kinemajungle:20191008124423p:plain

Credit:youtube

長い長い旅は、2人の姉弟を時に残酷にもてあそんでしまいます。

それは幼い2人には辛すぎるものでもあります。

 

しかし、どんな悲劇の中にあっても健気にひた走ることをやめない2人の姿を見ては、こちらが目を背けることは決して出来ないのです。

 

 

霧の中の風景 [DVD]

霧の中の風景 [DVD]

 

 

霧の中の風景 [Blu-ray]

霧の中の風景 [Blu-ray]

 

 

 

www.kinemajungle.work