天才・メビウスのヴィジュアル革命『アルザック・ラプソディ』
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『アルザック・ラプソディ』
メビウス監督・脚本・デザイン、2002年・フランス・全50分(14エピソード収録)
バンド・デシネ(フレンチコミック)の『アルザック』を、原作者メビウス自ら監修して、アニメ化された本作。
宮崎駿監督にも多大な影響を与えており、本作が『風の谷のナウシカ』の元ネタになったという話も。
異空間を旅する主人公の短話が羅列される作りには、どこか筒井康隆原作の『旅のラゴス』っぽさもあります。
天才・メビウスのヴィジュアル革命!
圧倒的に目を惹くのは、話の面白さよりもヴィジュアルの革新さです。
主人公は、反重力翼竜の背に乗って、多元世界"B砂漠"をさすらう孤高の戦士アルザック。
大気の流れにまかせて空を舞うその姿は、なるほどナウシカを思い起こします。
B砂漠は、隅から隅まで謎めいた場所。
アルザック曰く、B砂漠は「世界であり、システムであり、時間の連続体」らしい。
B砂漠を舞台にした短いエピソードが、独立して並べられますが、相互に話の繋がりはありません。
しかし、そのどれもが奇怪なイマジネーションと強烈なヴィジュアルを持って、迫ってきます。
一面の大地に群がり生える肉食植物、一度捕まれば巨人ですら離さない。
密生する植物の海にポツンと浮かぶ橋、その上で禅を組み笛を奏でるアルザック。
その光景は、地獄世界の中で唯一残された安寧の地のようにも見えます。
人工サソリ、バッタ爆弾、ガラス筒に閉じ込められた少女…SFとファンタジーが融合した強烈なイマージュのオンパレード。
エピソードの終わりには、もう少しメビウスの頭の中をのぞいていたい、とそんな想いに駆られます。