人生にちょっと疲れたら『フィッシング・ウィズ・ジョン』
こんにちは、キーノです。
今回は、人生にちょっと疲れたときに観たい『フィッシング・ウィズ・ジョン』。
1996年公開のドキュメンタリー作品です。
内容はジム・ジャームッシュ映画でおなじみのジョン・ルーリーが、気心知れた仲間と釣りの旅に出かける、たったそれだけ。
なのに、いやだからこそ素晴らしい。
この忙しない世の中で、いつのまにか隅に追いやられた静寂の時にじっくりと思いを馳せることができます。
旅のお供となる仲間が実に豪華。
- ジム・ジャームッシュ
- トム・ウェイツ
- マット・ディロン
- ウィレム・デフォー
- デニス・ホッパー
とこの並び。
皆さん、汚れたカッコ良さを持っている男たちですね。
本編の構成は、ジョンとの各ペアで全6話(デニス・ホッパーだけなぜか2話)となっています。
①ジム・ジャームッシュ
騒音鳴り響くマンハッタン、車の中で誰かを待つジョンがいた。
そこに颯爽と現れる1人の人物。白髪にサングラス、スラッとした身のこなし。
うわぁ〜、ジム・ジャームッシュ監督だ!
この登場シーンだけで元は取れました。
2人はモントーク岬にジョーズを捕まえに行くという。
車中でロックを聴きながらヘッドバンギングする2人。素のジャームッシュ監督が垣間見られる貴重な映像だ。
しかしいざ海に出ると、ジャームッシュはボソッと「なぜ俺はここに?」と呟く。このやる気なさすらカッコいい。
それからジョンが日本人スタッフに「アレを見ろ!」とカメラを向けさせた後、ジャームッシュと2人で「アホが見〜る〜、ブタのケ〜ツ〜」なんてジョークを日本語で飛ばす。
こんなジャームッシュ監督は本作でしか観れませんよ。
②トム・ウェイツ
ジャマイカの密林、川の上をカヌーで行く汗だくの男が2人。
ジョンとトム・ウェイツだ。
トムもジャームッシュ映画に出演するミュージシャンで、この2人はまさに『ダウン・バイ・ロー』の最強タッグだ。
さすがはミュージシャン、トムはカヌーの上で歌を決して忘れない。さながら陽気な海賊といった感。
釣りになると、バケツがないからといってパンツの中に魚をいれるトムが実にお茶目だ。
しかし彼は船酔いが酷い。
「吐いたらラクだぜ」と言うジョンに、「あんな美味い朝メシを吐くなんて損だ。もうちょっと取っとく。」と酔いながらもジョークを忘れない。
やはり良いタッグですね。
③マット・ディロン
コスタリカへ向け、未認可の小型機が空を飛ぶ。
飄々とするジョンの横には、明らかに不安そうなマット・ディロンの姿が。
飛行機がガタンッと揺れると、ジョンの肩にサッと手をやるマットが妙に子供っぽく見える。
無事現地に着いた2人は、舞台となる山を知り尽くした男から釣りのまじないを受ける。
しかし現地の言葉だから2人は体育座りでポカン顔である。
まじないの効果か、2人はカヌーの上でもひたすらボケ〜。
シュールなコメディ映画のよう。
④ウィレム・デフォー
スノーモービルで雪山を滑走する黒ずくめの男が2人。
ジョンとウィレム・デフォーだ。
ウィレムは『スパイダーマン』のゴブリン役など、不気味な笑いを浮かべる悪役が印象的な怪優。
ところが素顔はとても優しくて、驚くべきほどの姐御肌だ。
マイナス28度の雪山の中、お手製の小屋で夜を過ごす2人。
ジョンが寒がっていると「一緒の寝袋で寝る?」と言いながらニヤリ笑いを浮かべる。
これには流石のジョンも苦笑い。
⑤デニス・ホッパー
舞台となるタイ・バンコクの空港に現れたデニス・ホッパーは堂々たる貫禄をまとっている。
しかし一度ジョンと話し始めると、とても気のいいオジサンという感じだ。
彼らは現地で伝説となっている幻の巨大イカを仕留めにいく。
ところが2人はとにかく気楽に駄弁るばかり。
ジョンが『イージー・ライダー』の話を振ると、デニスは返す刀で「俺は生きてるから続編も作れるぞ」と話す。
べしゃりがメインになっているが、それでもタイの海は途方もなく美しい。
広大な海にポツポツと浮かぶ巨大な岩礁が奇妙に映える。
それでも巨大イカは現れず、代わりに釣れた小さなエイにビビる2人であった。
自然の中でのんびりと。流れる時間はそのままに。
そんなこんなでジョンは最後にこう呟く。
「やっぱり人生は素晴らしい」