不撓不屈の感動作!『黒い牡牛』
こんにちは、キーノです。
今回は、不撓不屈の隠れ名作『黒い牡牛』!
アーヴィング・ラパー監督、1956年のアメリカ映画です。
あらすじ
貧しい農家に暮らす少年レオナルドは、母の葬式を終えた夜、落雷で倒れた大木の下敷きになっている母牛を見つける。
母牛は死ぬ直前にオスの仔牛を産み落としていた。少年は仔牛を家に連れ帰り「ヒタノ」と名付けて育て始める。
闘牛種であるヒタノは勇猛果敢な猛牛に育つが、少年にはよく懐いていた。ところがある日、ヒタノは競売にかけられ、メキシコ市の闘牛会場に送られてしまう。
少年はヒタノを取り戻そうとメキシコ市まで一人で向かうのだが…
僕は映画に関してかなり涙腺がユルイ方なんですが、本作を観てまたやられました。
小さな農村の小さな友情
まず、少年レオナルドと牡牛ヒタノの深いレベルで繋がった友情の厚みがとても良い。
彼らはともに母を失くして独りぼっちの身。母親の愛情を受けることができないのです。
それを補い合うかのように、2人は追いかけっこしたり、散歩したりして互いの側を片時も離れません。
じゃれ合う2人の姿を見て、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』を思い出したりもしました。
その後、ゴツく逞しい闘牛に成長したヒタノ。自動車に突進してぶち壊すほど荒々しく成長しましたが、それでもレオナルドだけはヒタノと仲睦まじく接することができます。
こんなに堅い絆で繋がった2人ですが、ある日突然ヒタノは競売にかけられメキシコ市にある闘牛の大会場まで送られることになるのです。
闘牛は死ぬ運命にある
本作を観て闘牛のことをちょこっと調べてみると、かなり細かいルールがあるので驚きました。
ザックリですが…
①槍方
闘牛がフィールドに入ると、まず「槍方」という馬に乗った闘牛士のパフォーマンスが始まります。
馬上から首の付け根あたりを槍で刺し回るのです。
②銛打ち
それから「銛打ち」という闘牛士が入ってきて、短剣ほどの銛を2本ずつ牛の首や背中に刺していきます。
これは刺しっぱなしで、その後も牛の背中には銛がブランと垂れ下がって血も滴っていました。
③マタドールによるトドメ
最後に真打ち「マタドール」が登場し、赤布(ムレータ)を持って闘牛をヒラリとかわします。
テレビなどで見かけるのはこのシーンでしたね。
赤布ヒラリが一通り終わると、最後のキメとして真剣で急所(首の付け根)を刺して闘牛を仕留めます。
つまり闘牛は会場に送られたら、基本的にすべて死ぬ運命にあるのです!
それを知っているからこそ、少年は貧乏な村から遠路はるばる大都市まで駆けつけ、闘牛場に潜り混むのです。
「絶対に倒れない」その姿に涙…
他の闘牛たちの出番が終わり、いよいよヒタノに死の順番が回ってきます。
ところが待っていたのは感動のパフォーマンスでした。
槍方に体当たりし馬をひっくり返すヒタノ。背中には打たれた銛が何本も垂れ下がり、血が肌をつたう。
それでもヒタノが突進を止めることはない。観衆も興奮してやんややんやの大騒ぎ。
少年は傷つくヒタノを黙って見守ることしかできない。
マタドールには弄ばれるかのように突進をかわされる。体はボロボロ…また突進。
これが延々と繰り返される。
それでも絶対に倒れないヒタノ。いよいよトドメの段階に。
真剣を構えるマタドールに対してまだ突進を続けるヒタノ。
すると会場の空気が、観客の気持ちが徐々に変化する。
あちこちから「殺すな!殺すな!」と恩赦を求める声が上がる。ここで僕の涙も込み上げてくる。
ここから最後のネタバレを含んでおります!
ついに恩赦を勝ち取ったヒタノ。
血みどろのヒタノの元に、我慢できずかけ寄る少年レオナルド。もちろん危険な闘牛なので、観客席からは悲鳴が上がる。
しかし知っての通り2人は強い絆で繋がっていた。
感動の再会。大観衆のスタンディング・オベーション。
入場ゲートの長い通路をゆっくりと去っていく少年と牡牛。
世界を揺り動かした小さな友情に送られる最高の花道。
…良い映画でした(涙)