教育とは総合格闘技だったのか!実話の名作『奇跡の人』
こんにちは、キーノです。
今回は、実話をベースにした名作『奇跡の人』。
アーサー・ペン監督、1962年の伝記映画で、ヘレン・ケラーとその教師アン・サリヴァンの物語ですね。
僕は本作を観て「教育って総合格闘技なんだな」と強く実感しました。
あらすじ
生後まもなく患った高熱のせいで、視力と聴力、そして話す力を失った少女ヘレン・ケラー。
ヘレンと心を通わすことがまったくできないケラー夫妻は、家庭教師としてアン・サリヴァンという中年女性を雇う。
ヘレンを甘やかすことなく厳しく接するアン。激しく逆らい、懐こうとしないヘレン。 2人の格闘の日々が始まった…
圧巻のヘレン・ケラー像
やはり一番の注目ポイントは主役のふたり、ヘレン役のパティ・デュークとアン役のアン・バンクロフトでしょう。
とくにパティ・デュークの三重苦を見事に体現した演技は圧巻です。
目が見えない、耳が聞こえない、話せない。
一体どんな世界なのでしょうか。
パティの演技は「本当に目が見えてないんじゃないか」と思ってしまいます。ちょっと寄り目気味にして、何もない宙に視線を泳がせる感じ。凄いですね。
パティはその後、本作がテレビ映画としてリメイクされた際、教師のアン役の方を演じたようです。
教師アン役のアン・バンクロフトもさすがでした。『卒業』でダスティン・ホフマンを誘惑していたときのような妖艶さは皆無で、根気強い中年女性に徹しています。
ドラマかアクションか?
本作一番の見どころでもある「総合格闘技」もとい「教育」のシーン!
ヘレンは食事中、手探りで食卓を周りながら家族の料理を鷲掴みにして食べます。家族の方も叱るとヘレンが暴れ出すのを知ってるので黙認して知らぬ顔。
ヘレンの口元や服は食べカスでベットベトです。
それを見たアンはヘレンを椅子に座らせ、ナイフとフォークをきちんと持たせようとします。
さあ、ここから地獄の格闘シーンの始まり!
突如暴れ出したヘレンは食器を放り投げ、皿を割り、椅子を投げ飛ばし、アンをぶん殴り、噛みつき、ツバ吐き...荒ぶる神のごとく何でもアリ。
ところがアンも黙ってはいません。
もはや取っ組み合いの総合格闘技で、バックドロップまで炸裂します。関節技が見えたのは気のせいか…
しかもこのシーン、ほんの数分かと思いきや延々と続くのです。
劇中では昼に始まり決着がついたのが夕方、実に6時間ほどデスマッチしていたわけですね。
これはドラマの域を越えた教育アクション映画!
しかしそのかいあって、ヘレンは生まれて初めてナプキンをたたみ、フォークを使って食事をするのです。
ヘレンが生まれて初めて知る「世界」
アンは甘やかすばかりの夫妻に向かってこんなセリフを言います。
ヘレンの悪いところは目や耳ではありません。あなたたちの愛と哀れみです。
甘やかして自分が好かれようとするのはごく簡単です。
しかし自分が嫌われても厳しく教え育む、「これこそ教育なんだな」と少しばかり愛情を理解できたような気がします。
そして物語のラスト、盲目・難聴のヘレンの中で、ぶつ切りにされていた世界ーものや自然や人ーが一挙に繋がってひとつにまとまり始めます。
その高揚感、世界の開かれ方、そしてあれだけ反発していたアンに対する心境の変化。
最高の結末は直接ご覧になって体感する方が良いですよね。
本作はハッキリ言いますと、冒頭から泣こうと思えば延々泣いていられます。
ヘレンの切なさ、アンの忍耐、もちろん格闘シーンも泣き所満載です。
一々泣いてたらキリがないので今回は我慢しました。
それでもラストにはホロリと涙です。
映画は良いところでスパッと終わりましたが、現実世界でもアンはその後50年間にわたってヘレンの良き教師であり友であり続けたようです。
最近鑑賞した中では一番の映画でした!