映画はすべて「のぞき」だ!ヒッチコックの『裏窓』が傑作すぎる理由
こんにちは、キーノです。
今回の作品は、言わずと知れたサスペンスの傑作『裏窓』!
1954年のアメリカ映画で、監督はサスペンスの神様アルフレッド・ヒッチコックですね。
『サイコ』『レベッカ』『北北西に進路を取れ』など傑作を山のように生み出していますが、その中でも『裏窓』はトップクラスです!
あらすじ
カメラマンのジェフリーズは片足を骨折してしまい、車椅子生活をアパートの一室で送っていた。楽しみは双眼鏡で、向かいのアパートに暮らす住人たちを観察することだ。
しかしある日、喧嘩の絶えなかった中年夫婦の妻が突然姿を消す。夫の挙動に不信感を抱いたジェフリーズは裏窓から捜査を開始する。
本作の面白さは、映画の特権であるのぞき行為を「これでもか!」と全面に出してくれたことにあるでしょう。
映画の楽しみは「のぞき」にあり。
映画の面白さのひとつに、「映画鑑賞=のぞき」という構造があげられると思います。
当然ですが、劇中の登場人物たちは観客に見られているとは思っていませんし、僕たちの存在すら知らないでしょう。
まあ中には『デッドプール』や『フェリスはある朝突然に』『アニー・ホール』みたいに観客に直接話しかけてくるキャラもいたりしますが…
こうした映画世界と現実世界の壁を「第四の壁(The Fourth Wall)」と言ったりしますね。
ですから基本的に映画はすべて「のぞき」の楽しみを根源的に宿しているというわけです。
とくにサスペンスものだと、犯人の行為を覗ける特権がお客さんにあるので余計にドギマギしますよね。
『裏窓』は「のぞき」の完璧な追体験ができる!
「のぞき」という映画の隠れた性質を、ストーリーとして押し出している作品がいくつかあります。
例えば、望遠鏡で犯人を見つける『ホーム・アローン3』。音で盗聴する『善き人のためのソナタ』。
それから僕のオールタイム・ベストのひとつである『デカローグⅥ:ある愛に関する物語』も根暗な青年がグラマーお姉さんを覗くお話です。
そんな中『裏窓』はのぞき映画の頂点に君臨していると言えるでしょう。
『裏窓』には、とにかく「のぞき」の醍醐味が詰まりに詰まってます。
主人公ジェフリーズ(ジェームズ・スチュアート)は、双眼鏡でのぞいた向かいの住人たちにあだ名を付けていきます。
セクシーなバレエダンサーには「ミス・グラマー」とか、独身の中年女性には「ミス・ロンリーハート」なんて付けたりします。
名前は知らないけどよく見かける人にあだ名をつける、これ結構あるあるですよね。
他の住人たちも各々ユニークで見ていてまったく飽きません。
曲が思いつかず苦悩する「作曲家」とか、新婚で意気揚々としていたけど段々ため息ばかりになる「若い青年」とか。
のぞいているからこそ、余計にプッと吹き出してしまいます。
間近で直接見ると滑稽さはグッと減るでしょうね。
セリフはいらない。『裏窓』が発するサイレント映画の輝き
そして本作の凄い点は、セリフがなくても住人たちのキャラが一発で理解できてしまうところです。
双眼鏡で覗くので画的にはドアップの住人が映るんですが、声や物音は一切聞こえません。それでも身振り手振りでその人がどんな人か、何をしているのか一目で分かってしまうんですね。
ヒッチコック監督は終生「セリフなしでストーリーが理解できるのが理想の映画だ」とおっしゃっていました。
『裏窓』はそれが見事に発揮されています。
他にも色々語りたいですが、これ以上続けるとあんまり長くなりそうでいけませんね。
のぞきがバレそうになって、部屋の奥の影になってる部分に車椅子でスーッとバックするところなんかも良い。
バレるかバレないかスリルも「のぞき」の醍醐味です。
あと破天荒な行動をするグレース・ケリーがとても魅力的。「この人、あとあとモナコ王妃になるんだよな〜」と思うと、リアル『ローマの休日』感も漂います。
スリルと娯楽を兼ね備えた完全無欠の面白さ、心からオススメです!