死ぬ気があれば何でもできる『天国に行けないパパ』
こんにちは、キーノです。
今回の作品は『天国に行けないパパ』。
グレッグ・チャンピオン監督、1990年・アメリカ・90分
原題 Short Time
人間、死ぬ気になったら死ねないもの。
こんなメッセージを面白く可笑しく、熱く、感動的に伝えてくれる点で、本作は必見に値する一本だと思います。
死ぬ覚悟を決めた人の強さ、死ぬ気になった人にだけ訪れる幸運、とてもとても素晴らしい作品です。
あらすじ
勤続年数30年、シアトル市警察の中年刑事バートは、定年退職を1週間後に控えていた。
まだ10歳の一人息子をハーバード大学に行かせるため、日々貯金をすることが彼の生きがいだ。
ある日、生命保険加入のための検査にて、マリファナの常用がバレるのを恐れたバス運転手が、自分の尿と血液のサンプルをバートのものと入れ替えてしまった。
しかしバス運転手はそれ以前に、いつ死んでもおかしくない不治の病に冒されていたのだ。
代わりに死を宣告されたバートは、何とか息子にお金を残してやりたいと、職場の窓口で保険金の相談をする。
なんと35万ドルもの大金が保険としておりることが判明。ただし条件は、在職中の殉死。
タイムリミットは1週間、果たしてバートは無事に殉職できるのか。
死の宣告で羊は狼になる
犯人の追跡でも、バートは絶対に無理をしなかった。
車をかっ飛ばす相棒の運転にいつも不安気で、「いったん応援を待とうぜ」と二の足を踏む。
ところが死を宣告された羊は、殉職を目指して暴走する狼へと豹変する。
常時着用していたチョッキを外し、銃もホルダーごとロッカーにしまい込む。
逃走する犯人の車を時速200キロで追いかけ、後部座席から機関銃を撃ってこようがお構いなし。(以下がその証拠写真)
バスケットボールが跳ねるような坂道ドライブテクは、ドリフトならぬドリブル走行。
バンパーが外れようが、ボンネットが吹き飛ぼうが、フロントガラスが消え去ろうが、地獄の果てまで追い回す。
その姿は上半身のみになってもハンティングをやめないターミネーターそのものだ。
ところが、殉職を目指してひた走るのとは裏腹に、バートは仕事も私生活も右肩上がりに調子を上げる。
大胆な犯人逮捕で勲章を授与され、長年連れ添った相棒を豪華なディナーに連れ込んで、別れた妻には今まで言えなかった愛の言葉を伝える。
明日死ぬつもりで今日を生きる人にとって、後回しの概念は存在しない。
まさに「バートの辞書に不可能はナシ」だ。
本作はただひたすら楽しいだけでなく、何か熱いギフトを授けてくれます。
死ぬ気で夢中になれるものを僕も見つけたい、そう思いました。
素晴らしい映画です。