運命のリンク『君の名は』×『君の名は。』
こんにちは、キーノです。
今回は、日本メロドラマの名作『君の名は』。
1953〜54年にかけて公開された、大庭秀雄監督の三部作映画です。
1952年開始の同名ラジオドラマが元になっていますが、このラジオ版、あまりの人気に「放送日の木曜は銭湯から女性が消えた」らしいです。
ロンバケみたいですね。
もうご存知の方も多いでしょうが、2016年公開のアニメーション映画『君の名は。』のタイトルは本作から来ています。
ストーリーは全然違いますが、やはり同タイトルを採用するだけあって、随所に両作品のリンクが見られました。
両作品を比較鑑賞するのも面白いかもしれません。
あらすじ
東京大空襲の夜、爆弾の雨が降りそそぐ中、男と女は出会う。
身を寄せ合い助かった二人は、数寄屋橋の上で半年後の再会を約束する。
互いの名前も聞かぬまま、男と女はその場を後にするのだった…
すれ違いラブ・ストーリー
本作はいわゆる、戦後に起きる男女の「すれ違いの恋」を描いたもの。
それを三部作に分けて壮大にすれ違わせ続けます。
すれ違い範囲も日本全国にわたり、上は北海道から下は九州と、二人はすれにすれ違いまくります。
だいたい第1部:東京、第2部:北海道、第3部:九州といった感じでした。
この第2部「北海道篇」が特に面白い!
東京から北海道に引っ越した男は、地元アイヌ民族の少女に恋をされます。
「ユミ」というこの少女、一人称が「オレ」で馬を高速で乗り回すアマゾネス顔負けの野性味。
本作で一番好きなキャラだったので、あの結末に「おい〜」となりました。
すれ違う男女を演じるのは、佐田啓二さんと岸恵子さん。
特に佐田さんが男前すぎて驚きました。惜しくも37歳という若さで亡くなられましたが、その才能は息子さんに受け継がれることになります。
それがなんと中井貴一さん。
天才役者のバトンは貴一さんに託されたようです。
「戦後」と「被災後」の世界
ここですでに『君の名は』と『君の名は。』は、ともに男女のすれ違いが共通していることが分かります。
そしてもうひとつ、前者は「東京大空襲」、後者は「東日本大震災」を経験した世界が舞台となっています。
東京大空襲は1944年11月24日の夜に始まり(本作もここから始まります)、その後も複数回に渡って空爆が続きました。
1945年3月10日には、最大100万人を越える罹災者が出ています。
一方で『君の名は。』の劇中では隕石の衝突ということになっていますが、明確に3.11と向き合った作品です。
両作品とも、甚大な変化を被った後の世界ですれ違う若い男女を描いていますね。
「橋」は運命の二人をつなぐ存在?
本作『君の名は』の大きなシンボルとなっているのが「数寄屋橋」です。
男女はこの数寄屋橋で再会を約束し、のちに偶然の再会を果たすのも数寄屋橋。そして他にも、自殺を図る女を男が見つけた場所もとある橋の上でした。
考えてみると「映画」と「橋」は非常に相性が良い気がします。
古くは『日本橋』から『戦場にかける橋』など、離れた場所と場所ー敵対する国と国ーをつなぐものとして比喩的にも画的にも映えますよね。
また橋は別々の道に別れる中継地点でもあります。
男女が出会い、別れる場所として「橋」はもってこいなのかもしれません。
アニメ版『君の名は。』でも、すれ違いが起きる場所として「陸橋」が登場します。
瀧くんが三葉に電話をかけるのも陸橋、ラスト間際にすれ違って鈴がチリーンと鳴るのも陸橋、それからラストのラストも陸橋でしたね。
橋に行けば運命の人と出会えるかも…